本稿は、朝鮮における帝国日本の出版警察と刊行物の行政処分について探求することを目的としている。そのため、帝国日本の出版警察の組織、検閲ㆍ弾圧の種類や原因、実際弾圧を受けた事例の原因別統計などを分析した。そして帝国日本の自国内における新聞検閲の法的根拠になった新聞紙条例の規定を念頭におきながら、新しく帝国日本の支配下に置かれるようになった朝鮮=韓国における言論弾圧の法的根拠であった光武新聞紙法に規定されている内容を見てみた。帝国日本の対朝鮮言論政策の実務は、朝鮮総督府高等警察課および図書課が担当した。これらの部署は、毎年朝鮮における言論の動向を整理してきたのであるが、こうした記録はそのまま彼ら帝国日本の文化権力側からの弾圧の記録でもあった。事細かく規定された行政処分の標準になる内容は、19か項目にも及んでいる。しかし、こうした項目は、概ね二つに分類することができよう。すなわち、主に朝鮮の独立を刺激したり帝国日本の朝鮮統治を否認あるいは妨害する内容か、社会主義に関連した内容か、である。いずれにせよ、こうした項目に違反した記事については、事前ㆍ事後の弾圧があらゆる形で行われたのである。