組織は、それがどのような形態であろうと、その存続・維持・発展のためには、期間内に一定水準以上の具体的な成果を達成することが不可欠である。生体(有機体)としての組織の本質は、外部環境に適合するために、その内部環境を再配列することである。その再配列を機能させるのが、人的資源としての組織成員である。本研究の目的は、営利性を主目的としない非営利組織において、営利組織と同様に、人的資源管理の基本概念が機能するのかどうかについて、探索的に分析、考察することである。その際、キャリア概念を援用し、その有効性と展開可能性について検討を試みる。分析の対象としては、非営利組織から大学を選択し、所属する事務職員に対して分析している。第1節では、本研究の基本的前提、問題の背景、問題の所在、研究の目的、分析対象、研究方法を提示している。第2節では、本研究における主要概念である「組織における人的資源」にかかわる基本的視座と多機能性について述べている。ここでは、複雑人仮説と5つの機能が提示されている。第3節では、研究対象である大学組織の外部環境について言及している。ここでは、主に「文部科学省学校基本調査」に基づいて展開している。第4節では、研究対象である大学組織における内部環境について言及している。ここでは、「大学設置基準法」と「中央教育審議会答申」に基づいて展開している。第5節では、文献検索エンジン「CiNii」に基づく分析から抽出され、確認された特徴について述べている。ここでは29件の先行研究が提示され、これらは「大学職員・人事」(n=9)、「大学職員・能力開発」(n=17)、「大学職員・人材育成」(n=3)の3項目に分類されることが確認された。第6節では、「第2回全国大学事務職員調査」の二次分析から抽出され、確認された特徴について述べている。ここでは、「職員としての仕事への意識について」、「職場の雰囲気について」などの実態調査への分析がなされ、大学組織における3つの課題が提示された。第7節では、非営利組織における人的資源の戦略的役割についての結論を述べるとともに、これからの研究の方向性について言及している。