はじめに■第1部 心理療法史の全体像◆第1章 古代から近代までの心理療法史古代の呪術とシャーマニズム/原始的心理治療の共通性/儀式の生み出す象徴効果/寺院の医学と民間医学/哲学と精神修養技術/中世ヨーロッパの宗教的治療/悪魔祓いから催眠術へ/無意識の発見/ジャネの治療論◆第2章 精神医学と臨床心理学の歴史近代精神医学の夜明け/自由か、それとも社会への適応か?/身体論と心理論の対立/記述精神医学と現象学的精神病理学/身体療法の展開――インスリン療法、電気痙攣療法、ロボトミー手術/薬物療法と力動精神医学/臨床心理学の挑戦/心理療法の開発と新展開/理論対立の歴史/統合の時代へ向かうのか?■第2部 現代心理療法の多様な展開◆第3章 無意識へのアプローチ――精神分析の歴史精神分析の誕生/フロイトの自己分析/無意識と不安の防衛/終わりある分析と終わりなき分析/精神分析の発展と晩年のフロイト/アドラーと個人心理学/ユングと分析心理学/新フロイト派――ホーナイ、サリヴァン◆第4章 フロイト以後の精神分析アンナ・フロイトとメラニー・クライン/対象関係論の展開――ビオン、ウィニコット/理論的統合と自己心理学――カーンバーグとコフート/間主観的アプローチと構成主義/関係精神分析の登場――広まる治療関係の重視/ラカン派の精神分析/精神分析はどこへ向かうのか?/「無意識の自覚」に治療効果はあるのか?◆第5章 実証科学からの挑戦――認知行動療法の展開二〇世紀後半の動向/認知行動的アプローチ/行動主義と学習理論/行動療法の誕生――アイゼンクとウォルピ/スキナーと強化の理論/心理学における認知革命/認知療法と行動療法の統合/新世代の認知行動療法――マインドフルネスの導入/変化か、それとも受容(アクセプタンス)か?/なぜ同じ思考と行動が繰り返されるのか?/構成主義と関係論の視点/認知行動療法は自由をもたらすのか?◆第6章 実存を問う心理療法実存主義的セラピーの登場/実存哲学の影響/カウンターカルチャーと人間性心理学/東洋思想とトランスパーソナル心理学/ロジャーズと来談者中心療法/フォーカシングと体験過程/パーソンセンタード・アプローチから感情焦点化療法へ/フランクルとロゴセラピー/人間性心理学の問題点/実存主義的セラピーの可能性――ハイデガー哲学からの再考◆第7章 心理療法の最前線――家族療法から構成主義のセラピーへ対人関係に焦点を当てた第四の潮流/家族療法とシステム論/コミュニケーション派の家族療法/広まる構成主義の影響/オープンダイアローグ/ナラティヴ・セラピー/家族関係か、治療関係か/ポストモダンの影響/構成主義的セラピーの問題点■第3部 心理療法はどこへ向かうのか?◆第8章 理論対立から統合へ理論対立の歴史/心理療法のエヴィデンス/どの技法でも効果は同じなのか?/心理療法の共通要因/心理療法の統合への動向/人間像の違いがもたらすもの/人間性の本質とは?――現象学の視点から考える◆第9章 心理療法とは何か?なぜ「無意識」を解釈するのか?/精神分析の本質/「本当の自分」を発見するセラピー/認知行動療法に「気づき」は必要か?/なぜ関係論、構成主義が広まりつつあるのか?/自由に生きるための心理療法◆第10章 現代社会と心理療法の未来心理療法の歴史的な意味/パラダイムシフトを起こした精神分析/セラピストに権威は必要か?/近代社会に生じた「自由と承認の葛藤」/自由とは何か?――ヘーゲルの自由論/よい「治療関係」とは何か?/自由と承認の得られるセラピーへ/心理療法の未来おわりに人名索引