序章第1章 複数の位相を持つ「殉教」古代教会における「殉教」概念の発生殉教思想の日本への流入絶対的悪を規定する迫害力の逆転の思想としての殉教十六〜十七世紀における「殉教」概念西欧言語圏における殉教研究の方法論日本語による「殉教」言及殉教と歴史認識−宣教言説の受容と反発の狭間で「殉教」という訳語の誕生近代以降の「殉教」言説のゆくえ殉教の様々な位相第2章 日本の殉教者の初めての聖性公認「聖人」を生む制度−「列聖」と「列福」列福開始以前のフランシスコ会とイエズス会の対立フランシスコ会の殉教顕彰の伝統迫害での逃避について(De fuga in persecutione)−イエズス会宣教における初期の殉教観列福過程の最初の段階−「情報と尋問の裁判」二十六人中のイエズス会関係者「信仰への憎しみ」の確認日本のキリスト教徒からの列福嘆願書慶長遣欧使節列福過程の再開教会裁判(一六二一〜二二年)における質問条項長崎裁判裁判をすっぽかす人たちイエズス会と殉教伝1−モレホンイエズス会と殉教伝2−マテウス・デ・コウロスメキシコ・プエブラにおける教会裁判裁判記録と教皇庁裁判所イエズス会と托鉢修道会の対立の政治問題化列福列福後の現象−信仰の盛り上がりと普及活動クリストヴァン・フェレイラのフェイク・ニュースイエズス会と列福候補者ベネディクト十四世と長崎二十六殉教者の特異性第3章 聖遺物日本で希求された聖遺物信者の命がけの回収と聖遺物の意識的な破壊キリシタン版における聖遺物日本の文化的文脈における遺骸日本に運ばれたヨーロッパの聖遺物霊的な勢力圏を刻む聖遺物聖遺物と勢力圏「現地」産の新たな聖遺物の出現−ザビエルの聖遺物崇拝聖遺物の集積地・マカオヨーロッパへ旅する聖遺物についての相反する資料ヨーロッパにおける日本の聖遺物ペドロ・バウティスタの2つの頭蓋骨真正性と同時代性の間殉教伝、絵画、演劇−広義の聖遺物入れ第4章 日本の殉教者のイメージ形成列福以前の殉教者の図像化−フランシスコ会における磔刑と聖痕フランシスコ会のプロセッション列福前の図像の用い方フランシスコ会による殉教絵画イエズス会における磔刑図日本の磔刑報告のプロテスタントへの影響十字架のイメージと十字架への信仰イエズス会の文化的文脈における磔刑イエズス会における最初の日本殉教者の図像化ニコラ・トリゴー『日本殉教史』における磔刑図トリゴー『日本殉教史』図像群のヨーロッパ的文脈1−プロテスタント由来の殉教・拷問図意図的に描かれる/描かれない日本の刑罰トリゴー『日本殉教史』図像群のヨーロッパ的文脈2−古代の殉教図との関連『日本殉教史』の拷問とガッローニオの古代殉教の考古学列福以後のイエズス会の日本殉教者図像の変化日本殉教者の磔刑図と聖アンデレゴルゴタの丘への同化十字架から炎へ−殉教者を象徴するもの第5章 舞台の上の日本日本の殉教の演劇化の嚆矢托鉢修道会と殉教演劇修道会演劇研究の資料的問題イエズス会の劇場における日本の表象の嚆矢イエズス会における日本殉教演劇の始まり「カトリックの前線」地帯における日本殉教演劇「日本殉教演劇の作品群」とドイツ語圏イエズス会演劇における殉教−カタルシスと演劇的暴力日本殉教演劇に見られる暴力とその文脈−『日本のキリスト教徒の闘い』とその周辺「恐怖の劇場」と殉教の悲劇−殉教を見るということイエズス会学校のバレエと殉教者−殉教場面の忌避1フランスにおける日本関係のイエズス会学校演劇−殉教場面の忌避2礼節とイエズス会の教育舞台における死の表現の変遷−『ピリマロ』・『ブンゴ王キバヌス』・『テオカリス』おわりに−イエズス会の演劇における日本をめぐる言説と象徴性のゆくえ終章殉教という美徳の衰微西欧と再び接続される日本現代日本に継承された「殉教」概念の系譜