本稿は、中村亮平の『朝鮮童話集」の内容と性格を、前代の朝鮮説話集と比較·検討したものである。『朝鮮童話集』は「内地」で発行された558頁に達する膨大な童話集であり、少なくとも6刷を重ねている。古小説を含めた説話集としての性格を持っているが、収録された「童話」は大幅に改作されていることを、実証的に分析した。田中梅吉が編んだ朝鮮総督府『朝鮮童話集』が挿絵なしの新書版として、180頁に達する分量に留まったのに対し、中村の童話集は収録された62話ごとに木村荘八の挿絵を入れて刊行された豪華版であり、「内地」の日本児童に大きな影響を及ぼした童話集と思われる。朝鮮の学校で日本語を教えながら2年も満たない期間に、延べ62話の説話を収録した童話集を発刊したという点で注目されるが、本文で明確にしたように、多くの話が以前に刊行された説話集、童話集、朝鮮総督府教科書を参考にして採集されたものである。説話の専門家でない中村は、小説家として直·間接に採集した朝鮮説話忠実に「内地」に紹介したのではなく、自由に内容を変更したという点で彼の童話集の内容と性格に対する慎重な検討が求められる。