本研究は北海道の小樽で発行された文芸雑誌『クラルテ』の創刊号と同人小林多喜二(1903-1933)の作品を中心に見てきた。文芸雑誌『クラルテ』はタイトルの通りアンリ·バルビュスのクラルテ運動の刺激、影響の色が濃い文芸雑誌であり、小林多喜二をはじめ創刊同人たちは文芸雑誌『クラルテ』を通じて、アンリ·バルビュスの思想を実現しようとした。文芸雑誌『クラルテ』で追求した真理は、真実を通じて目覚めその悟りを世界に知らせるものであった。神は真理であり、その真理は光と光明であり、希望であった。世界に知らせるには狭いものであるが、文学テキスト空間の中で、自分たちのやり方で実践できるものが必要であった。そして、文芸雑誌『クラルテ』の創刊と、そこでの文筆活動を通じて、日本帝国主義政策の屈折した社会現実を語ろうとした。 さらに、当時の日本社会の時代精神に抵抗して、これから進むべき方向と目標を明確にし、クラルテ運動の精神を呼び覚ますことに力を注いだ。