「住民が主体性をもって活動に参加すること」こそが、活動を次の世代に伝承・継承していく装置的役割を担っているものだと考える。本研究の目的は、この点を解明するに当たり、地域への「愛着」と「継承」に関する既往研究から市民の地域活動への関りに対するメカニズムを明らかにするための考究を行うことである。結果として、地域活動の担い手の中核には、中年期以降の人々が中心となって継続した地域活動を行うことが次世代へ継承していく上で重要になることがわかった。また、地域への愛着形成は、時間の関係でなく「肯定的な印象」を参加者に与えることが重要である。参加者が肯定的な経験をすることによって愛着が形成され、活動に参加することへの意義や必要性などといった気づきが芽生え、活動が定着していく。その先に持続可能な住民・市民参加による地域活動の基礎が構築されてくることになる。さらには、参加者自身が自分ごととして、当該地域の魅力を捉えることにより、他者への参加を呼びかけ、参加数の増加に努めていくといった循環となる。このような一連の流れこそが、これまで形にならない広い意味での「伝承」という概念教育と言われていたことを具体的に示した。