本稿は接続助詞として機能する「ものの」を取り上げ、その用法を調査し、構文的・意味的特徴を明らかにすることを目的としている。本稿では接続助詞としての「ものの」は、「ものの」に導かれる節の事態と主節の事態との関係からみると、石黒(1999)のいう三つの前提に基づく「逆接関係をなすもの」と、「逆接関係をなさないもの」すなわち補足的な説明を付け加えるような<注釈用法>に大別することができる。本稿ではそれらの用法間に見られる意味的連続性に着目し、「ものの」に共通する性質を観察した。 現代日本語において「ものの」は事態間の逆接関係をもとに使用されており、前件から推論される内容に相容れない事態が後件に置かれる。しかし、逆接関係を積極的かつ明確に表しているわけではなく、前件と後件の事態、または前文脈との関わりから文脈の流れに沿わない、あるいは何らかのずれが感じられれば「ものの」の使用が許容されると言えそうである。言い換えると、単なる並列や継起関係には用いられにくく、それが「が/けれども」との大きな相違点である。 また、「ものの」を含む文では二つの事態を同様の重みで対比させるのではなく、事態の重点は後件にある。それゆえに、「ものの」が導く前件の事柄は後件の事態を述べるために付加的または注釈的に提示されるというニュアンスを帯びやすい。文末形式には述べたて形式に加え、推量表現、疑い表現、表出なども主節の文末に現れうるが、通常の問いかけや働きかけ表現は現れにくい。